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 まだ眠っている宝
下之郷遺跡の遺物は、環濠から出土するものが圧倒的です。でも、内周3重環濠のうち、たったの11%しか発掘されていません。どうしてもっと発掘し、遺物を掘り出さないのでしょう?
こんな質問が聞こえそうです。ここで、発掘に対する考え方や発掘にまつわる話しをしましょう。
発掘をするのか、しないのか
まず、遺跡は壊さずに保存するのが基本的な考え方で、これが「文化財保護法」の理念です。したがって、遺跡や古墳の存在が分かっていても発掘はしません。
だから、下之郷遺跡周辺の田んぼで遺跡があると判っていても発掘しないのです。 住宅建設や工場建設などの開発工事の申請があった場合、その工事によって遺跡が破壊されるかを判断します。遺跡が破壊される場合には、発掘調査を行い記録・保存します。 でも、実際の開発工事はさまざまなケースがあります。
マンション建設を例にとって説明します。
遺跡の存在が予測される場所でマンション建設を行う場合、建物の部分は基礎工事で深く掘るため遺跡が壊れます。しかし、駐車場や敷地内の公園など掘削工事が無い場合は地下の遺跡は壊れません。このように、工事計画に対応して発掘の是非を判断するのです。 基礎工事で掘削が行われる場合でも、地下に遺跡が存在するのかどうか、判らないこともあります。そのようなケースでは、まず、数か所で試掘を行って遺跡の存在確認を行います。これを「試掘調査」とか「立会調査」と呼んでいます。
試掘で、遺跡がありそうだ・・ということになると、その敷地のどの部分に遺跡が存在するのか、遺跡の面まで広範囲に浅く掘り下げて確認します。これを「平面調査」と呼んでいます。この結果、遺跡の存在が確認されれば「発掘調査」を行います。
実際にはもう少し複雑です。
基礎工事の掘削深さと遺跡が存在する面までの深さも判断に影響します。この関係が微妙な距離関係にある場合、盛り土をして地下の遺跡を保護できるようであれば、無理に発掘することはしません。発掘せずに保存するのが優先されます。

平面調査
平面調査
発掘調査
発掘調査
トレンチ掘り
この他、「確認調査」があります。下之郷遺跡は国指定遺跡になりましたが、その前に遺跡の範囲を確認する必要がありました。この場合は、宅地開発のような開発工事ではないけれども、遺跡の存在、広がりを調べるために農閑期に田んぼを借りて試掘調査をします。
まず、平面調査を行い、重要と思われる個所で小面積を掘り下げます。このような掘り方を「トレンチ」とか「ベルト」と呼んでいます。
トレンチはわずかな面積ですが、ここから思わぬ宝物が出ることもあります。

トレンチ
推定環濠とトレンチ
トレンチ
トレンチの例
トレンチ
トレンチから盾が出土

しがらみ杭やメロンの果肉、完全な形を残している盾、籠などの貴重な物もトレンチから出土しました。

まだ眠っている宝
上で説明しましたが、環濠の存在が確認されても、そこを全面発掘することはしません。
環濠の図を右に示しますが、赤で着色した部分が本発掘した環濠です。(トレンチは細かくて表示していません)
内周の3重環濠だけを見てみると、推定延べ長さは2460mで、そのうち870mほどは実際に確認されています。確認された環濠の内、約280mが本掘り発掘されているだけです。これは、推定される環濠長さのたったの11%しか発掘されていないということです。
上にも書きましたが、せいぜい幅1mのトレンチから素晴らしい遺物が出てきます。
このような事実から考えると、まだ発掘していない環濠にはどんな宝物が眠っているのかわかりません。

発掘の範囲




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